「明日の高崎」荒木征二

高崎市議会議員・荒木征二の日々を書き連ねています。

消毒液と除菌スプレーを全戸配布!?

 広報高崎4/15号に掲載されていました。高崎市は4月末から、市内の全世帯(約17万世帯)に手指消毒液と除菌スプレーを配布すると発表しました。その配布方法は、高崎市の職員が個別に全世帯を訪問して、対面で手渡しするとしています。

 目的は、家庭内感染の予防とその注意喚起とのこと。

 

 さて、この件についてです。

 

 貰えるのならありがたい、という声も確かにあります。しかし、私には疑問です。以下、長文となりますのでご注意ください。そして、市議会議員としての私にできる対応は、容認せざるを得ないというものです。専決処分して決断されてしまっては、一人の議員として無力であることを痛感して自責と自戒を込めて記したいと思います。

 

1.手指消毒液について(ビオレu)

 家庭においても手指消毒は感染対策として極めて有効です。しかし、家庭においては帰宅時に流水での手洗い(石鹸など使えばなお良)で十分対策となります。アルコールによる除菌・消毒は、水場のない外出時にこそ有益(速乾でハンカチなど使わなくて済む)なのではないでしょうか?

 

2.除菌スプレー(ファブリーズ)

 確かに帰宅時の衣服を除菌することも有益かもしれません。しかし、市民の中にはこの種のスプレーの化学的で人工的な"臭い"を嫌う人がいます。たとえ無香料をうたう商品であっても敏感に反応してしまう方もいるのにも関わらず、この種のスプレーを配布することの無配慮さ。

 

3.全戸配布すること

 約17万世帯を約800人(4/14上毛新聞、4/15市議会教育福祉常任委員会より)の市職員が全戸訪問して配布することについてです。

 

-1 市職員とはいえ、他人の訪問を市民が喜ぶか? 感染対策の注意喚起としながら対面を全戸に実施することの危険を考えているのか? もし市職員の中に感染者がいたら、もし、訪問した職員が感染者と対面したら。市職員がウイルスを媒介することになるのではないかという恐れは決して拭えません

-2 全戸配布と簡単に言うが、現実問題として可能か? 私の経験からして、特に都市部の住宅は訪問しても住民と会える可能性はとても低いです。そもそも不在のことが多いですし、特殊詐欺などが横行している社会ですから、インターホン鳴らされても見ず知らずの人間がモニターに映っていたら、応答すらしてくれません。それがアパートとなると遭遇率は極めて低くなります。オートロックマンションなどはどのように訪問していくのでしょう? 私の経験からすると、平日日中に回っても効率はとても悪いです。休日に配布することなるのでしょうか。経験からして最も効率が良いのは休日の午前中ですが、職員は休日返上して配布に回らなければならないのでしょうか?

 終わりの見えない作業に職員は延々と取り組むことにならないでしょうか。

-3 みなさんは市職員はいつも暇しているとお思いでしょうか? 地方公務員に向けられる世間の目がとても厳しいことは重々承知しています。それでもあえてお伝えしたいのは、行政サービスの現場は今、深刻な人手不足に陥っています。決して増えない人員の中で増え続ける業務量・・・ 高崎市の職員はギリギリのところで目の前の業務と向き合っています。そこに、配布作業に時間を割かれては、業務が滞ることは明らかです。業務が滞ることで行政サービスが滞る。このツケを背負わされるのは市民の皆さんです。この配布事業の割を食うのは市民の皆さん自身でもあるのです。

-4 配布が世帯単位です。単身世帯でも1セット、3世代世帯でも1セットの配布ですから、公平を保ち難い手法です。

 

4.地方創生交付金の使い方

 この事業の財源は地方創生交付金を使うとされています。令和3年度分なのか2年度補正分なのか定かではありませんが、交付金の使い方は自治体の個性ですから正解不正解はありません。が、消毒液と除菌スプレーを配ることに使うというのは、正解に程遠いのではないかと考えています。求める人にや事業所にPCR検査を手当てするなど、もっと市民の納得性の高い手法があるのではないでしょうか。

 

 結論をまとめると、この事業は、頼んでもいないのに借金させられて購入した消毒液と除菌スプレーを市民の虎の子である職員を酷使して感染拡大の危険性をはらんだ配布作業に従事させることで低下した公共の弊害を甘受させられる、ものだと思っています。

 

 以上、思いつくままに書き連ねてみました。先述の通り、これを専決処分されてしまった以上、高崎市議会議員・荒木征二として異を唱えることは叶いません。私にできることは、市民の皆さんがこの事業をどう捉えるのか、その民意を正確に知ることなのだろうと考えています。

  

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職員が対面で手渡しする様子が記載されています