「明日の高崎」荒木征二

高崎市議会議員・荒木征二の日々を書き連ねています。

読書メモ「薄情」/絲山 秋子

 

薄情

薄情

 

 

 なにを隠そう、初めて絲山さんの作品を読みました。今までなんで読んでこなかったんですかね??

 

【こんな読み口はじめて】

 この作品は、ぼくらにはある意味異常です。ですが、高崎、群馬に馴染みがない人には通常です。

 なにしろ、作中の舞台、出来事がすべて高崎、群馬の実際になっているので、登場する出来事、登場する場所と風景。そのどれもが、ぼくが実体験したものですし、実際に見聞きしているものなのです。ミステリーなんかですと、あえて地名を変えて書かれたりすることもありますよね。横山秀夫「64」も、舞台は群馬県ってのが定説ですが、D県(G県ですらないっ)ってなっていたり。

(横山先生はD県=群馬県を否定されているとのことですが、群馬県だとおもって読んでいると、とてもすんなり背景が入ってきます。)

 

 しかし、この作品はすべて実地名です。出来事も正確な日付で登場します。ふつう、小説ではその舞台、背景を想像しながら読むものだと思いますが、なんと言いましょうか、その必要がない。吉永奈央「紅雲町珈琲屋こよみ」など読んでいても同じような感覚をもちましたが、この作品ほどダイレクトではなかったですね。「高崎駅前の夜ははやい」のくだりには唸らされました!

 

【薄情とは】

 ネタバレを書く気はまったくないので、タイトル「薄情」についてでけ。一つは、「薄情」なのは誰か?

 主人公か? たしかに淡白で相手になにも期待しないし求めない姿勢は「薄情」かな。

 主人公の周囲の人間か? 主人公はとっても人好きがする人物(イケメン?)のようで、様々な人が主人公に関わってきます。主人公も人は好きのようです。けれども、そうして積極的に主人公に接してくる人はとっても無情であったりして、主人公をなにかしら落胆させる人々が登場してきます。彼らも「薄情」かな。

 高崎もしくは群馬の人々か? 来るものは拒まない。たしかにそんな気質はあるけど、同じように去る者も追わない、というところは「薄情」なのかも。

 

 そんなことを考えていると、誰もかれもが「薄情」に思えてきます。就職で東京に出ようか迷う女性を、引きとどめようとしない男。不倫相手の奥さんの心情をまったく顧みない女。自分たちの子にほとんど関心を持たない親・・

 

【コミュニティについて】

 さて、この作品中でとっても興味深い場面があります。ある人物(女性)が、コミュニティと言いましょうか、人と人とがつながり合うパブリックな部分(もしくは場所)について語るのですが、この捉え方が秀逸です。なるほど~、と思いました。

 

【思い至った、その先に】

 さて、そんなこんなの主人公の日常。終盤ではそれまでの人々とはまったく違うマインドを持った人物が登場するなどして、主人公も思いをめぐらせ、自分なり考えを紡いでいきます。

 

 もちろんこのくだりは読んでのお楽しみです(お約束!!)。